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コムギのいま
2014 / 12 / 23 ( Tue )
平成26年12月21日朝のコムギ ゆかさんより
コムギの心配をしていただいているみなさん こんにちは
全国各地からFBなどであたたかいお言葉をいただきとても励みになります

新しい薬の投与が始まってから、厩舎のゆかさんよりコムギの写真と共に様子について丁寧にご連絡があり、現時点では下痢や熱発はなく、食欲もあるとのことです。

本日はニューキロン系の抗生物質の点滴投与が始まって三日目を迎えました。
現時点では懸念していた副作用もなく、先ずは一安心なのですが、投与をしている内はいつその副作用に見舞われるか予断を許さないところでもあります。

写真からもお分かりの通り、現段階で瀕死の重傷などとそういった訳ではありませんが、副作用が怖く、当初よりこの薬は使いたくないと考えていた薬を投与せざるを得なくなり、これで効果が現れなければ思い当たる薬がないといわれている現在、治療に関しては獣医を、そして看護については厩舎のみなさんを信頼し、ただただ副作用がなく、新しい薬物投与の効果が現れてくれることを祈るだけです。

もちろん考えたくもありませんが、コムギにとって最終的な治療になるやもしれないという現実を目の当たりにし計り知れない不安を抱くことになり、諸々勘案してその治療開始前に本件事故概要について事実を公にいたしました。
結果として事故発生から相当の期間が経過した後の発表となってしまいました。

事故からまもなくして、多くの方々から事故態様やコムギの容態についてのお問い合わせ、また、お見舞いのお言葉などを頂戴しておりましたが、事故当初から事を荒立てたくないとの思いでおり、誰かの事を責めるつもりもありませんでしたので、それらにお応えすることから、あらぬ風聞へと発展し、本件事故に関与する方々に何かしらの不利益が及ぶことになってはいけないと考え、詳細をお伝えすることは極力控えておりました。もちろん厩舎の方々にも本件事故については緘口をお願いしておりました。

いくら自身のこととはいえ、良い話題ではない一部の業界事情を語るということにはもちろん抵抗がありますし、分別が付かない訳でもありません。正直なところとても悩みもしましたし、いまでもすっきりしないなにかがあるのは事実です。
事故より約1ヶ月半に亘り沈黙を守っていたところから察していただけると嬉しく思います。

業界の慣例では、何か事があると当事者間にて内々で解決することが多いようです。
交通事故に例えると、警察にも届けず当事者間で示談する、こんなイメージでしょうか。
双方の合意が為されれば解決方法として悪いことではありませんが、結果として双方が納得感を持てなければ、やり取りの中で違和感や軋轢が生じ、それらが不満となり、尾ひれがついて噂となっていくことになります。

私自身も過去の様々な事故や事件について、いろいろな方々からお話を伺ったことがあります。
中には事実に反していたり、誇張されたものもあるでしょう。人には解釈や見解の相違があって然りですから当然なんですよね。でも、そこが風聞の恐ろしいところだとも感じております。

そういった事を回避したかったので、悩んだ挙句、本件については馬主協会とばんえい競馬振興室へ相談に行きました。
主催者である振興室さんのご担当者から事故報告の手続き方法を伺いましたので、然るべき手続きを踏んでおくべきと判断し、事故検分に至ったのです。

事故概要の公開に際して、私の主観や感情などを交えることなく見聞したことを整理し、事実のみ記載するよう心掛けました。




実は、事故概要以外にもみなさんに知ってもらいたいことがあります。


それは厩舎のみなさんによって、コムギが毎日どういった看護を受けているか。
そして、この事故がもたらしたもうひとつのことについてです。

私が情報発信を控えている以上、外部の方には事故概要や事故のその後について知られる訳もありませんから、日々の看護といっても、みなさんは知る由もないでしょう。
中には預託厩舎に対して不信感を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
諸々の事情が分からなかったでしょうから致し方のないことだと思います。


繰り返しとなりますがコムギは重傷です。いまこの時点では、四本脚で歩けるようになるか否かすら分かりません。

獣医にとっても蹄部に重大な刺傷を負う症例は初めてのことで、当初より獣医の見識に基づいた手探りの治療でした。痛みの原因すら特定できずに、また、介助なく立ち上がることが困難な状況が1ヶ月以上にも及びました。
立ち上がる際に馬房の壁で擦ったり、診療中に痛みで暴れないようにと馬体を固定されるロープなどにより、肉が露見するほどのひどい擦過傷が体中にあります。治療が長引き、日を増すごとにその傷も深く、そして範囲も広がっていきました。
そんなコムギを毎日、毎日支えてくれております。

コムギの担当厩務員さんは事故日より一日の休みも無くコムギの看護にあたっております。

本来であれば早朝からの業務(いま時期は本来 朝4:30頃から8:00頃まで。季節によって異なる)や夜の業務(20時頃から夜の食事を与える業務)が終了し、厩務員さんそれぞれが休憩に入る時間でも、コムギの診察や治療が終わるまで付きっきりです。ほぼ毎日のことで、これまでであれば既に休憩に入っている時間まで差し掛かっています。毎日、多くの時間がコムギの看護のために割かれているんです。
厩舎から直線距離で数十メートル程度の診療所まで行くのですら相当の時間が掛かります。コムギを上手に立ち上がらせ、痛い思いをする診療所へ行きたくないとの意思を示すコムギをなだめ、休んでは励まし、そしてまた休み、ゆっくりゆっくりと痛む脚を引きずり、三本の脚で歩んで行きます。

医療に関する見識を有するゆかさんはコムギの日常で少しでも健康を維持できるようにと、診療中も皆でコムギの脚腰のマッサージなどを続け、血流を良く保ち少しでも健常な脚への負担を減らすべく努めてくれております。
コムギの馬服についても、厩舎で持ち合わせていた馬服は麻袋のような生地でこれではコムギがかわいそうと、ゆかさんが手作りしてくれました。

馬房では横になっている時間の多いコムギのために、通常の何倍もの寝藁を使い、安全性や快適性が保たれるようにし、寝ていても食事が採り易いようにと新たに飼料を購入し、また容態の急変などに備えコムギの馬房に赤外線監視カメラを設置してくれました。
これらについては先生やゆかさんをはじめ、厩舎スタッフ総出で行ってくれていることです。


コムギ 診療中
コムギの監視カメラ

コムギが重傷を負った事実の他に、残念で、そして悔しくてならないのが、先生や厩舎のみなさんと掲げていた共通の目標が目の前からあっけなく消えていってしまったことです。

平成27年2月15日開催 第40回 黒ユリ賞

コムギはここを目標と定め日々励んでおりました。

先生曰く「事前に騒ぐと逃げていく」との事で、験を担いでいたことから、私はこれまで公の場では黒ユリ賞の「く」の字にも触れることはしませんでした。
もちろんその他の特別競走や重賞にだって出走させたいし、勝たせたいですよ。でも黒ユリ賞のそれとは想いの程がまったく異なります。

先生は預託当初から牝馬の頂点を目指すことのやり甲斐などについて話しており、一度命を失う寸前までいったコムギがそのステージに立ち、我々やファンのみなさんに夢をもたらしてくれるのではとの期待を抱いておりました。
コムギの能力は高く、持ち前の末脚で観る人を魅了し、ファンも多くおりました。
馬主である私自身が語るのは憚るのですが、決してはるか彼方の夢物語などではなかったと確信しております。

中島調教師が騎手としての現役時代、黒ユリ賞で勝利を挙げたこともあります。
最愛のパールを失った後にめぐり合ったコムギで必ずや牝馬の頂点にと静かなる闘志を燃やしてくれていたはずです。


預託馬に発生した重大事故に対し、管理責任を精一杯果たさねばと努めている先生はそのやるせなさを誰に、どこにぶつけることができますか。

これらについて、私が話さなければご自身で語られることはなかったと思われます。


中島厩舎は大きな規模の厩舎ではありません。商売も上手ではありません。

中島先生は日ごろ強く自己主張をすることはありません。いつも黙って話を聞いていることが多いです。でも焼酎が入ったら少し饒舌です。関係者の誰もが「真面目だ」と評価する、そんな調教師です。

ゆかさんは馬たちのためには口うるさいです。赤いコートの背中には「鬼嫁参上」と金文字で刺繍がされています。レース出走前には脚立を使い小さな体を駆使し、おおきなばん馬たちを飾りつけ愛情いっぱいで送り出す、そんな厩舎のおかみさんです。

担当厩務員のたかし君は業務中に大怪我をしたこともあります。でも辞めません。パールの担当も務めておりました。能力検査後の食事中、二頭揃って晴れ舞台のスタートゲートに立たせることが夢だと話してくれました。そんな働き者の厩務員です。

みんなの夢や目標は叶えることができなくなりました。
でも、コムギの看護が一番で、誰もそんなことには一言も触れません。

誰ひとり言葉にせずとも察することができます。



コムギ馬房前1

世界で一番若く、故に、世界で一番未熟なばんえい競馬馬主であるボクと縁を持った

アズキとコムギは

世界で一番あたたかく、そして世界で一番愛が溢れるばんえい競馬厩舎でこれからも過ごして行きます。

コムギとゆかさん



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by: * 2016/01/07 15:48 * [ 編集 ] | page top
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